■丘のまちにオープンした、農家が焼き上げるパン屋。
(文・仰木晴香/スロウ86号掲載/あのまちの、あの人が焼く 今日のパンと焼き菓子)
丘のまち、美瑛町。その畑の真ん中に昨年春、新たなパン屋がオープンしました。その名もひとさじ農場製造所。扉を開けると、テーブルいっぱいにこんがりと焼けたパンがずらり。どっしりとしたカンパーニュに、ナッツがごろごろと入った木の実のパン、シンプルなチャバタや白いパン、それらを使ったサンドイッチなどなど。表情豊かなパンを前に、どれにしようかと目移りしてしまいます。
手がけているのは、小田栄治さん。パン屋だけでなく、宿やカフェも営み、さらには小麦農家も兼業しています。忙しい日々ですが、何でも自分でやってみるのが小田さんのモットー。自ら育てた小麦を使い、スタッフと共に、毎日約25種類のパンを焼き上げています。
■美瑛の風景を作る人になりたくて。
兵庫県出身、大阪の製薬会社で働いていた小田さん。初めて美瑛町を訪れたのは、今から約28年前の夏のこと。仕事で札幌を訪れた際に、タクシーの運転手におすすめされたことがきっかけだったそう。「冬にはよくスキーをしに来ていたのですが、夏の北海道は初めてで。風景の 美しさに衝撃を受けて、『こんなところに住んでみたい』と思ったんです」。
移住を決めた次に考えたのは、美瑛町でどんな仕事をするかということ。考えた末に選んだのは、宿泊業でした。「その時から農業にも関心があったのですが、そのための土地やノウハウがなかったので、じゃあ観光業だなと」。移住準備のために時間の融通が利く自営業に転身し、8年かけて準備を進め、2006年に美瑛町へ移住。その翌年、ペンション「スプウン谷のザワザワ村」を開業しました。
宿を始める上で小田さんが大切にしたのは、「美瑛町の風景の一部になる」ことでした。周囲に広がるのどかな畑の風景に馴染むよう、自らの手でコテージを建て、絵本の世界のような宿を作り上げました。着々とファンを増やし、人気の宿に。しかし次第に「肩身の狭さ」を感じるようになったと言います。「美瑛町の美しい風景は、農家さんが日々の営みの中で作っているものです。それを一方的に借りてしまっているような気持ちが、ずっとありました」。
自分も農家になって、美瑛町の風景を作る人になろう。
そう決意した小田さんは、2年間の研修を経て、2012年に新規就農。 3ヘクタールの土地でトマトやトウキビの生産から始め、周囲の農家から土地を譲り受けながら徐々に規模を拡大。 2 0 1 5 年には念願だった小麦の栽培をスタートさせました。小麦を選んだのは、小麦畑が小田さんにとって美瑛町の象徴的な風景だったから。「小麦の穂が風に吹かれて、海原のようになびく様子が美しくて。小麦畑って、風が見えるんですよ」。畑の面積は50ヘクタールまで広がり、その8割が小麦畑だと言います。
宿と畑。美瑛町の風景の中で営みを続けてきた小田さんにとって、「生産した小麦でパンを焼いて届けたい」という思いが膨らみ始めたのは、とても自然なことでした。「自分が考える『風景』には、建物や畑だけでなく、そこで暮らす人と、その人々が作り出す生産物も含まれています。ですからパンを焼くことも、『風景を作る』という理念においては一貫しているんです」。
パンを焼きたいと思った理由はもう一つ。それは地元の人々へ恩返しをしたいという思いでした。「すでに宿の食事でも手づくりのパンは提供していましたが、地元の方にも届けたかったんです。宿を通して美瑛町を多くの人に知ってもらう中で、やっぱり地元を一番大切にしなくてはいけないと、ずっと考えていました」。お世話になっている地域の人に喜んでもらえるようなことをしたい。彼らの暮らしを支えたい。こうして2025年4月、ひとさじ農場製造所をオープンさせました。
■自ら育てた小麦の風味を最大限に活かすパンを。
材料の小麦は、一部のパンに使われるライ麦を除き、すべてが自家栽培です。使っているのは、キタノカオリという希少品種。栽培が難しいために生産量が減少している一方で、パンに使うとモチモチとした食感と豊かな風味が生まれることから、パン屋からの人気が高い品種です。小田さんの畑で栽培を始めたのは、2019年のこと。最初は3ヘクタールの広さでの試験的な栽培でしたが、「それでパンを焼いたらとてもおいしくて!」。生産量を拡大させ、現在では33ヘクタールの面積で作付けを行っています。
大切に栽培した小麦だからこ そ、その味をきちんと活かしたい。そのために収穫した小麦は、中心部から外皮まで3段階に挽き、パンの種類ごとにブレンドして使い分けています。きめ細かく柔らかい食パンには、雑味がなく膨らみやすい1番粉のみを。香ばしく風味豊かなパン・ ペイザンには、小麦をまるごと味わえる全粒粉を。使う小麦は一種類でも、挽き分け、配合を変えることで、さまざまな風味と食感のパンを生み出すことができるのです。
小麦の味を邪魔しないよう、イーストや砂糖の量を抑えるのも重要なポイント。すべての生地を一晩以上寝かせ、じっくりと発酵させます。製造に時間はかかりますが、そうすることで味わい深いパンに仕上がるのです。
■美瑛のテロワールを伝えるパンを焼き続けたい。
「ここにしかないものを作りたい」と、小田さん。「大阪で会社員として働いていた時は、どれだけ多くの人に商品を届けられるかが重要でした。何百人に調査してデータを取って、すべて同じ規格で大量に作ることが求められていて。でもこの土地に来て、考え方が変わったんです。都会のようになんでも手に入るわけじゃないからこそ、身の回りにあるものを材料に、自分の手を動かして表現してきました。それがお客さんにも喜んでもらえて。美瑛のテロワール(風土)から生まれるものを大切にしたい、ここにしかないものを伝えたいと思うようになりました」。
少量しか作れなくても、日々個体差が生じても。この場所でしか生み出せないオリジナリティにあふれるものこそ、人々の記憶に残り続ける。美瑛で積み重ねてきた20年間で、小田さんが気づいたこと。ひとさじ農場製造所で焼くパンは、その思いの結晶です。
美瑛の風景から生まれる、唯一無二のパン。ひと口かじれば、豊かな小麦の味がいっぱいに広がります。風に揺れる小麦畑を思い浮かべながら、味わってみてください。
■商品紹介
小田さんたちが心を込めて焼き上げるパンを、通販でもご紹介できることに。店舗で人気のパンが揃った、バラエティ豊かなセットです。
・ごほうびフルーツ:オーガニックレーズンにイチジク、オレンジピール、くるみ。ドライフルーツやナッツをめいっぱいに混ぜ込んだ、ちょっとリッチなカンパーニュです。
・オーガニックショコラオレンジ:有機カカオ入りのしっとりもりもちの生地に、チョコレートとオレンジピールをプラス。甘くてほろ苦い、大人な味です。
■作り手 ひとさじ農場製造所(美瑛町)
小田栄治さんは、美瑛の風景に惚れ込み、 2006年に移住。宿、カ フェ、農家、そしてパン屋。どの事業も、自らの手を動かして立ち上げてきたのだそう。「元々、手仕事が好きなんです」と、笑顔で話してくれました。
■商品詳細
賞味期限:製造より冷凍で1ヵ月、解凍後2日
原材料:
・ごほうびフルーツ/北海道産小麦、ひとさじ農場キタノカオリ全粒粉、北海道産ライ麦粉、オーガニックレーズン、マスカットレーズン、くるみ、オレンジピール(オレンジ、砂糖、還元麦芽糖水あめ、ぶどう糖/トレハロース、酸味料)、いちじく、塩、モルト、酵母(一部に小麦、くるみを含む)
・畑のパンペイザン/ひとさじ農場キタノカオリ全粒粉、北海道産小麦粉、自然塩、モルト、酵母(一部に小麦を含む)
・バゲット/北海道産小麦、ひとさじ農場キタノカオリ全粒粉、自然塩、モルト、酵母(一部に小麦を含む)
・ベーコンとチーズのエピ/北海道産小麦、豚肉(網走産)、シュレッドチーズ、ひとさじ農場キタノカオリ全粒粉、オリーブオイル、自然塩、砂糖、モルト、酵母/調味料(アミノ酸等)、リン酸塩(Na)、発色剤(エリソルビン酸Na)、増粘多糖類(一部に小麦、卵を含む)
・オーガニックショコラ・オレンジ/北海道産小麦、ひとさじ農場キタノカオリ全粒粉、オーガニックチョコレート(有機カカオマス、有機砂糖、有機ココアバター/乳化剤)オレンジピール(オレンジ、砂糖、還元麦芽糖水あめ、ぶどう糖/トレハロース、酸味料)、オーガニックココア、自然塩、モルト、酵母(一部に小麦、乳成分を含む)
・贅沢シナモンロール/北海道産小麦、北海道産バター、アーモンドパウダー、砂糖、卵、シナモン、ひとさじ農場キタノカオり全粒粉、オーガニックココア、カルダモン、自然塩、モルト、酵母(一部に小麦・乳成分・卵・アーモンドを含
む)
・挽きぐるみクロワッサン/北海道産小麦、北海道産バター、砂糖、ひとさじ農場キタノカオリ全粒粉、自然塩、卵、モルト、酵母(一部に小麦・乳成分・卵を含む)
セット内容:ごほうびフルーツ、畑のパンペイザン、バゲット、ベーコンとチーズのエピ、オーガニックショコラオレンジ、贅沢シナモンロール、挽きぐるみクロワッサン×各1
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