■一生をかけて取り組みたい酪農の仕事
(文・仰木晴香/スロウ85号掲載/とっておきのレシピ教えてください)
酪農が盛んで、人よりも牛が多いまち、中標津町。竹下牧場の2代目である竹下耕介さんは、この場所で酪農を柱に、チーズづくりや宿泊業など、さまざまな事業に取り組んでいます。
子どもの頃から牧場の仕事を手伝いながら育った竹下さん。都会への憧れもあり、高校卒業後は関東へ進学します。「めいっぱい遊んだ」という学生生活を経て中標津へ戻り、家業を手伝うことに。
そこで竹下さんは酪農の面白さに気づきます。日々変化する自然や生き物を相手にする酪農という仕事。重要な牧草づくりも、行うのは年に2回だけだから気を抜くことはできない。同じ日はなく、毎日が試行錯誤の連続でした。「この仕事には終わりがない。だから一生をかけてできる」。こうして23歳のとき、牧場を継ぐ決心をしました。
しかしその直後、事故で大けがを負ってしまいます。思うように動けない数ヵ月間は、竹下さんに考える時間をくれました。自分の役割、周囲への感謝。やるべきことを見つめ直した竹下さん。それ以来、「牛の幸せ」を一番に考えながら牧場経営を続けてきました。
■チーズを通して実現したかったこと。
竹下さんが幅広い事業に取り組むようになったきっかけは、2012年に作った「夢ノート」でした。酪農を通して自分が実現したいこととは何なのか。突き詰めて出た答は「中標津に人を呼びたい」という思いでした。「人がやってくるということの価値が地方では特に高い。インフラの維持という面でも、この場所に人がいるということがとても大切です。それに自分自身も望んでいることでした。酪農家は、お客さんとのつながりが少ない職業ですから」。
まずは2018年に、牛のモチーフを内装などに散りばめたゲストハウス「ushiyado」をオープン。訪れた人を迎える場を作りました。
その翌年に始めたのがチーズづくりです。実は「夢ノート」を作る以前から、チーズづくりが一つの夢だったという竹下さん。酪農家向けのチーズの講習会に参加し、その奥深さに魅力を感じたことがきっかけでした。共働学舎の宮嶋望さん(本誌1号掲載)や三友牧場の三友由美子さん(本誌26号掲載)、白糠酪恵舎の井ノ口和良さん(本誌22号掲載)など、道内で活躍する先駆者たちを招いて勉強会を行い、技術を身につけていったそう。
チーズづくりについて学ぶ中、次第にその夢が「中標津に人を呼びたい」という思いと重なりました。チーズがまちへ人を呼び込むきっかけになるのではないか、と思い立ったのです。ヒントをくれたのは、海外でのチーズ研修。地元のミルクで造られたチーズを、地元の人々が日常的に食べている。イタリアやフランスでそんな光景を見た竹下さんに、変化が生まれました。「チーズ事業のゴールを、付加価値を高めて道外で売ることから、中標津へ食べに来てもらうことへ変えました。どちらもおいしいチーズを造るのは同じ。だったら、地元の人も気軽に食べられて、外から人が来てくれるほうが良いなと思ったんです」。
■ミルクと向き合う時間が何よりも幸せ
造るのは、フレッシュタイプのモッツァレラとリコッタ、そして3ヵ月熟成のマリボーの3種類。どれも�狠櫺舎匸譴離潺襯�〞そのものを味わってもらうための、いわば「牧場の名刺代わり」となるチーズです。
竹下さんが大切にしているのは、ミルクをやさしく扱うこと。牛舎のすぐ隣に工房を建て、生乳はバケツで運び込みます。これは生乳の脂肪分が痛まないよう、衝撃をなるべく抑えるため。搾り立ての状態を維持し、生乳本来のおいしさを活かす。井ノ口さんの教えです。
さらに原料となるミルクの生産も重要です。牛たちに良い牧草を食べさせるため、有機的な土壌改良を重ねてきました。 2 0 2 2 年には草地の有機認証も取得。「自分も口にするものだから、納得がいく品質のミルクを生産したい。やっていること自体は、15年程前からずっと変わりません。
チーズの製造は毎週金曜日。モッツァレラとリコッタを竹下さんが、マリボーを妻の邦枝さんが担当します。多忙な日々を過ごす竹下さんですが、「チーズはずっと自分の手で造りたい」と話します。「牛舎で絞ったミルクは、パイプを通ってタンクで冷やして出荷される。つまり生産したミルクを見る機会が、酪農家である僕にもなかったわけです。でもミルクは、土や牧草の管理をして牛を育てた集大成。チーズづくりを通してミルクと向き合う時間はとても幸せで、自分にとって必要なことなんです」。
牛とこの町にかける竹下さんの思いが詰め込まれた、ナチュラルチーズ。初めての商品だから「はじめまして」、熟成から目覚めたから「おはよー」と、遊び心が込められた、かわいらしいネーミングもポイントです。中標津の風景を思い浮かべながら、味わってください。
■セット内容紹介
フレッシュなミルクを活かしたチーズは、どれもクセが少なく、ミルキーな味わい。子どもから大人まで、みんなが楽しめるチーズです。
・はじめましてモッツァレラ:程良い弾力と、ほどけるような食感。切るとミルクがあふれ出します。食べる前に常温に戻すと、薫りやミルキー感がアップ。
・おかげさまでリコッタ:ほかのチーズの製造過程で出るホエイと生クリームを使い、一般的なリコッタよりリッチな味わいに。デザートとしてもおすすめ。
・おはよーマリボー:コクと少しの酸味を感じる、3ヵ月熟成のチーズ。ブロックタイプは薄くスライスしてそのまま、シュレッドタイプは加熱して料理に。
■作り手 竹下牧場(中標津町)
竹下牧場の2代目、竹下耕介さん。父の竹下日吉さんはこの地に入植し、酪農を始めました。現在牧場で飼育している頭数は380頭。そのうち1割はブラウンスイスです。31歳で牛舎を新築した時、「自分で責任を負って手がけたい」と導入したそう。最初にチーズ講習会に参加したのも、ブラウンスイスの乳質がチーズづくりに適していることを知ったからだとか。
■商品詳細
・はじめましてモッツァレラ
賞味期限: 製造より7日
原材料:生乳(北海道中標津産)、塩
・おかげさまでリコッタ
賞味期限: 製造より11日
原材料:乳清(北海道中標津産)、生乳、塩
・おはよーマリボー ブロックタイプ
賞味期限: 包装日より60日
原材料:生乳(北海道中標津産)、塩
・おはよーマリボー シュレッドタイプ
賞味期限: 包装日より60日
原材料:生乳(北海道中標津産)、塩
セット内容(内容量):はじめましてモッツァレラ(100g)、おかげさまでリコッタ(120g)、おはよーマリボー(ブロックタイプ)(100g)、おはよーマリボー(シュレッドタイプ)(150g)×各1
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