■「用の美」を楽しむ、根曲がり竹の野菜かご
(文・仰木晴香/スロウ85号掲載/北のものづくり人)
北海道の山に自生する千島笹。雪の重みで根元が曲がることから、通称「根曲がり竹」とも呼ばれています。この素材でかごを編んでいるのが、野村俊也さん、奈緒美さん。妹背牛町の自宅兼工房で、日々竹と向き合っています。
親戚に手づくりの指輪をプレゼントしたことをきっかけに、ものづくりに興味を持つようになったという俊也さん。奈緒美さんも趣味で続けていたかご編みを通して、ものづくりへの関心を深めていました。「始めは手芸店で気軽に手に入る材料を使っていたのですが、段々と素材に興味を持つようになって。道産のクルミやヤマブドウの樹皮で作り始めました。そのうち、自分で材料を採取するところからやってみたくなって…」。
ものづくりを仕事にしたい。そんな思いを胸に日本の手仕事について調べるうち、2人は竹細工と出合います。暮らしの道具として親しまれてきた竹細工に、強く惹かれたそう。そんな時、比布町に千島笹工芸館が作られること、その立ち上げのために地域おこし協力隊を募集していることを知った2人。「こんなチャンスはもうない」と、すぐさま応募を決意。こうして2023年4月に比布町へ移住し、近藤幸男さんのもとで竹細工職人としての修業をスタートさせました。
かごづくりは竹を伐り出すところから始まります。9月、竹が冬支度を始める頃。山へと入り、藪の中をかき分けつつ、かごづくりに適した竹を見極めながら伐ります。採取した竹はきれいに洗って乾かし、竹割り鉈で竹ひごに。そうしてやっと、かごが編めるのです。「根曲がり竹は、材料を作る面ではとても手がかかる素材です。節が多くて割りづらいし、細いから一つの作品を仕上げるために何本も竹を採る必要がある。だけどかごを編む上では、丈夫で美しい、最高の素材なんです」。
寝る間も惜しんで、基礎となる竹割りに没頭する日々。2人はより一層、竹細工に惹かれていきました。「山の中に生えている竹を、編める状態にするまでにかかる時間と労力を実感して。一から手がけることで、竹という素材と、手仕事のすばらしさを再認識しました」。山から伐り出してきたばかりの竹を洗ったときの、輝くような美しさ。自らの手で、一つの植物から暮らしを支える道具を作り出す達成感。材料を手にするところから始めるものづくりにしかない感動がありました。
2024年4月に独立してからも、さらに技術と知識を磨いていった2人。教材となったのは、今も残る古い竹かごや書籍でした。北海道各地に加え、竹細工の長い歴史を持つ長野県を訪れたり、古書店で文献を探したり。「古いものから教えてもらえることがたくさんあるんです。編み方や竹の伐採期、使われている竹の年数。地域ごとに編み方も違うんですよ」。竹に触れ続けるうち、竹細工の歴史や文化に対する思いも深まっていったそう。「古いかごから、当時の職人さんの魂を感じるんです。作り手はいなくなっても、ものはずっと残り続ける。そこに込められた先人の思いを、受け継ぎたいと思うようになりました」。
2人が大切にしているのは、丈夫で美しいかごを作ること。日本に生えている竹の中で、竹細工に使える品種は約30種類。その中でも丈夫で経年変化が美しい のが、根曲がり竹だと言われているそう。節が多い分強度が高い上、しなやかで頑丈に編めるのが大きな特徴です。素材の持ち味を引き出せるよう、竹ひごの厚みを均一に整えたり、しっかりと詰めて編んだりと、何度も繰り返す作業の一つひとつを丁寧に行い、かごを仕立てます。
加えて2人が挑戦しているのは、現代の生活にあったデザイン。伝統的な編み方や形を大切にしながらも、大きさを調整したり、新たな使い方を提案しています。かつて山作業で使われていたナタ入れは、クラッチバッグとして。石鹸置きを大きく編んで、温泉かごに。根曲がり竹特有のやわらかな青みを帯びた色は、どんなシーンにも馴染みます。
丈夫で、生活に馴染む竹かごを作りたい。その背景にあるのは、「暮らしの中で長く使ってほしい」という思いです。直しながら使い続けることができ、経年変化により深い色味へと変わっていく竹かご。使い込むことで表れる「用の美」があると、2人は話します。「たくさん作ることはできないけれど、1つ持っていれば何百年も使い続けられる。ものだけではなく、職人さんの思いや使ってきた人の時間も一緒に受け継がれていくと思うんです。何十年か先、僕たちが作ったかごも『あの時にお母さんが買ったかご、まだ使っているんです』って言ってもらえたらうれしい。そのいつかの喜びのために、今、丈夫で美しいかごを届けたいです」。
今回紹介するのは、スロウオリジナルの野菜かご。使いやすさを意識し、細部にまでこだわりを詰め込みました。食器かごや食品ストックなど、さまざまな使い方ができるのもうれしいところ。長く、長く、使い続けたいかごです。
■商品紹介
「竹細工の素敵な野菜かごがほしい!」。そんな編集部の憧れを形にしてもらいました。竹の美しさ、デザインのかわいらしさ、そして暮らしの中での実用性。根曲がり竹という素材の良さを最大限に活かした野菜かごです。
・軽くて滑らかな手触り
繊維がまだ軟らかい1年目の竹を使うことで、裏側をギリギリまで漉き、なるべく薄い竹ひごに仕立てています。仕上げには両端を削って整え、いつまでも触っていたくなるようなやさしい手触りに。ささくれが刺さる心配もありません。
・上げ底で通気性バッチリ
野菜の保管で心配なのが湿気。適度な大きさの編み目と上げ底で、通気性を高めました。さらに胴と底を1本の竹ひごで繋げて編むことで、丈夫な作りに。重たい根菜を入れても大丈夫。しなやかな根曲がり竹だからこそできる編み方です。
・竹のつややかな美しさ
若い竹ならではの爽やかな色味と、ぴかぴかと光る内側。長く使い込めば、経年変化も楽しめます。
・外側に向かって広がったフォルム
全体が見えて、中身が取り出しやすいよう、フチを広げて。キャベツなど大きめの野菜も入ります。
■作り手 野村俊也さん、奈緒美さん(妹背牛町)
2人とも北海道出身。制作の傍ら、ワークショップや販売会を積極的に行い、竹細工の魅力を直接伝えています。手に取ってくれた人との会
話から、デザインや使い方のアイデアを得ることもあるそう。
■商品詳細
商品素材:竹
商品サイズ:
口径:縦25×横28cm
底面:縦16×横24cm
高さ:12cm
備考:
※手づくり品のため、掲載写真とは多少異なる場合があります。
※汚れたときには水で洗い、しっかりと乾かしてください。タワシでゴシゴシこすってもOKです。洗剤を使った場合にはよく洗い流してください。
※湿気はカビの原因になります。戸棚などにはしまわず、風の通るところに置いて使ってください。
■宅急便60サイズ発送(常温)
■お届けまでの時間目安
ご入金確認後4ヵ月で発送予定。
■熨斗
対応不可