■本場のシャルキュトリーに魅了されて。
（文／猿渡亜美、スロウ84号掲載）
せたな町出身の広大さんと、静岡県出身の友里菜さん。2人はフランスで修業を積んだ後、洞爺湖のザ・ウィンザーホテルの「ミシェルブラス洞爺」で働き始めます。世界的に著名なシェフであるミシェル・ブラス氏がプロデュースをした店で、料理の技術を高めていきました。その中で、広大さんは次第にシャルキュトリーの魅力にとりつかれます。「フランスでは街のあちこちにシャルキュトリーがあって、日常に溶け込んでいたんです。ずっと憧れを抱いていました」。そんな様子を見かねたミシェルから「もう一度フランスに行ってみたらどうか」と背中を押され、現地の専門店で学ぶことに。わずか1ヵ月ほどの滞在でしたが、レシピだけでなく、シャルキュトリーを管理するためのタイムスケジュールまで事細かに知ることができたそう。こうして今の広大さんの基礎が築き上げられたのです。
■自然エネルギーを活用し、この地ならではの熟成を。
結婚し、子どもにも恵まれ、人生のターニングポイントを迎えた2人。広大さんは兄が営む高橋畜産で養豚業について学ぶために、実家のあるせたな町に戻ることにしました。シャルキュトリーには欠かせない豚についての知識を蓄えながら、試作品を作る日々が3年ほど続きました。
さらなる転機は、知人のチーズ工房タカラ（喜茂別町）が活用する氷室の存在を知ったことでした。氷室とは、冬季に外気を取り入れて水を凍らせて、夏季には熟成庫の温度を安定的に保つ冷熱源とする仕組みです。電力を使わずに庫内の温度を調整することで、緩やかな温度変化が実現します。「チーズが熟成できるなら、生ハムも作ってみたい」と考え始めた広大さん。近い将来、店を持つことを意識し始めます。すると、せたな町でかつて作られ、活用されないまま取り残されているという氷室が見つかったのです。約30年前に自然エネルギーを活かして、脱化石燃料を目指して研究が進められた建物でした。残念ながら氷室をそのまま使うことはできませんでしたが、建物の断熱を活かしてチーズ工房タカラのシステムを取り入ることに。こうして広大さんは地元の資源を活用し、開業することに決めたのです。
1年ほどかけて食肉加工製造工房、菓子製造工房、店舗に分けて改築。特に1階にある食肉加工製造工房には、広大さんのこだわりが詰まっています。仕入れた枝肉を処理する一次加工場のほか、生ハム室、ソーセージ室、調理加工場と1〜2畳ほどの部屋に分かれています。求められる温度や室温が異なるための区分けです。生ハム室とソーセージ室は、冷水を循環させて、室内を安定的に冷やして管理を徹底。道南杉を使った棚を設けたり、海風を吹き込ませるなど、地域の自然環境を取り入れた造りです。取材中、広大さんができたてのドライソーセージを味見させてくれました。肉のうま味が強く、噛むほどジューシーで堪りません。地勢や構造を知ったことで、より一層おいしく感じられました。
■新たな要素を加えて、食肉文化の再構築へ。
洞爺で過ごした6年間、せたなに暮らしてからの3年間で、生産者とのつながりも増えました。肉だけではなく、野菜、果物、乳製品、ワイン、日本酒など。生産者との関係は、日々の商品づくりに活きています。2人が生み出した商品は、季節の食材を使ったものを含めると50種類以上。中には、地元の漁師におすそ分けしてもらったイクラから生まれた「イクラ入りソーセージ」なる商品も。サッカムセタナイは友里菜さんが作るお菓子も含めて、前菜からデザートまでをトータルで提案するのがコンセプト。週末には店を開けて、シャルキュトリーとデザートを提供しています。旬の果物を使ったケーキやパフェなど友里菜さんが作るスイーツを求めて、地元だけでなく遠方からも足を運ぶ人も。「遠く離れたところで知ってもらったり、味わってもらったら、次はせたなに来てもらいたいんです。お店を開いているのは、この場所と共に発展していきたいから」。潮風を感じながら、地元の素材を活かした料理を味わうのは、きっと格別でしょう。
店名にも掲げる「サッカム」は、アイヌ語で干し肉という意味だそうです。古くから行われてきた北海道の文化を大切にして、今の北海道でしかできないシャルキュトリーにしたい。広大さんの思いが込められています。「たとえば日本食は、古くからの和食にこだわり過ぎず、洋食とも組み合わせて、新たな料理として世界に届けようとしている。北海道でも今までのものを活かしつつ、新たなものを加えて再構築することで、新しい食肉文化を築きたい」。北海道ならではの素材を取り入れたり、北海道生まれのパンやワイン、日本酒との組み合わせを考えたり。再構築によって生まれる、新しい食肉文化がどんなものになるのか。広大さんと友里菜さんなら、新しい答に辿り着くことでしょう。
■商品紹介
・ドライソーセージ（ブラックペッパー）
噛むほどに豚肉のうま味が引き立ちます。黒胡椒が粒ごと入っていて、スパイシーな味わいです。
・パテ・ド・カンパーニュ
豚レバーの田舎風パテ。素朴で奥深い味わいです。ピスタチオが良いアクセントになっています。
・ベーコンスライス
レンガの自家製燻製窯で、北海道産のサクラのチップを使って燻製。脂のうま味が強いベーコンです。
・ソーセージ（レモン＆パセリ）
爽やかなレモンの香りとパセリの風味がポイント。軽やかな後味で食べやすいソーセージです。
・ソーセージ（燻製）
口に入れると燻製の香りが広がる、ジューシーなソーセージ。太めで食べごたえがあります。
・ソシソン・オ・ショコラソーセージ
ナッツやドライフルーツ、洋酒が入ったおつまみチョコレート。ドライソーセージに似せて作っています。
■作り手 サッカムセタナイ（せたな町）
海水浴場や釣りの名所として知られる、せたな町太櫓（ふとろ）地区。サッカムセタナイは心地良い潮風が吹いてくる丘の上に、店舗兼工房を構えています。�盒狭�大さん、友里菜さんによるシャルキュトリーとスイーツはこの土地、この空気、この2人だからこそ生み出せる、唯一無二の味わいです。
■商品詳細
・ドライソーセージ
原材料／豚肉（北海道産、洋酒、食塩、黒胡椒、乳糖、ブドウ糖/発色剤（亜硝酸Na)、酸化防止剤（V.C）
内容量／80g
賞味期限／製造より冷蔵で30日
・パテ・ド・カンパーニュ
原材料／豚肉（北海道産）、豚肝臓、生クリーム、赤ワイン、ピスタチオ、卵、食塩、洋酒、ブドウ糖、香辛料、ゼラチン/リン酸塩、発色剤（亜硝酸Na）、酸化防止剤（V.C）
内容量／80g
賞味期限／製造より冷蔵で16日
・ベーコンスライス
原材料／豚肉（スペイン産）、食塩、砂糖、ブドウ糖、香辛料/リン酸塩、発色剤（亜硝酸Na）、酸化防止剤（V.C）
内容量／100g
賞味期限／製造より冷蔵で21日
・ソーセージ（レモン＆パセリ）
原材料／豚肉（北海道産）、レモン、パセリ、食塩、香辛料/リン酸塩、酸化防止剤（V.C）
内容量／3本
賞味期限／製造より冷蔵で16日
・ソーセージ（燻製）
原材料／豚肉（北海道産）、食塩、香辛料/リン酸塩、発色剤（亜硝酸Na）、酸化防止剤（V.C）
内容量／3本
賞味期限／製造より冷蔵で16日
・ソシソン・オ・ショコラソーセージ
原材料／チョコレート（国内製造）、アーモンド、ヘーゼルナッツ、オレンジ、砂糖、はちみつ、粉糖、ドライラズベリー、オレンジリキュール、ピスタチオ、バター/乳化剤、香料
内容量／100g
賞味期限／製造より冷蔵で30日
商品内容：ドライソーセージ（ブラックペッパー）、パテ・ド・カンパーニュ、ベーコンスライス、、ソーセージ（レモン&パセリ）、ソーセージ（燻製）、ソシソン・オ・ショコラ×各1
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