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■北海道、長沼町で広がる輪。
（文・猿渡亜美／スロウ83号掲載）
灯し始めは溶けた蝋が雫のように美しく伝い、中盤になると強い炎のもとで儚く形を変え、終盤には波紋のように広がっていく。最後までさまざまな表情を見せてくれるキャンドル「自然の色彩を纏った橙」。手がけるのは、nupという屋号を掲げる東辻由香さん。nupはアイヌ語で野原、原野を意味し、その名のとおり、大地に根を張るような、素朴で力強い作品を生み出しています。
東京生まれの東辻さんは、東日本大震災を機に沖縄へ移住。フローリストとして、現地の花を使ったブーケやアレンジメントを制作していました。その後2019年に結婚し、夫の希望で北海道に移り住むことに。しかし、そのタイミングで間もなく、コロナ禍に入ってしまいます。空いた時間を活用して、以前から興味があったキャンドルの世界に足を踏み入れました。「沖縄と比べると北海道は日が暮れるのが早くて、特に夜が長く感じられました。最初は家の中で楽しめる趣味として始めたんです。キャンドルクラフトコース（日本キャンドル協会認定資格）に入り、初級、中級、上級と次第にレベルアップ。最終的にはアーティストコースに入会しました」。一度決めたらとことん突き詰めるタイプの東辻さん。基礎を習得した後は、次第にオリジナリティを発揮するようになります。
夫の転勤で長沼町へ引っ越すと、本格的に作家として活動を開始。「長沼は花農家が多く、野菜も米も麦も穫れる。何でもあるんです」。町内産のトルコキキョウ、ラナンキュラス、アネモネ、パンジーや稲などを取り入れて、地域ならではのキャンドルを作るようになりました。さらに素材だけでなく、人との出会いにも恵まれます。たとえば、長沼でコーヒーの焙煎を手がけるばいせん屋habu（本誌79号掲載）の土生佳祐さんとは、「商品にならない素材を活かしたい」という思いが一致し、欠点豆を使ったキャンドルを共同制作。新たな出会いによって生み出されたキャンドルを携えて、地域のイベントなどに出店することも増えました。
■時をかけて変幻するペンシルキャンドル。
今回紹介する自然の色彩を纏った橙は、東辻さんが2024年の夏に制作を始めた作品。ピンク、黄色、藍色などの鮮やかな色合いが印象的なペンシルキャンドルです。天然顔料で色を付けており、季節によっては北海道で採れたフキやエゾヤマザクラの顔料を使うことも。自然から生まれた色だからか、飾っているだけでやさしく寄り添うように心を落ち着かせてくれます。
このキャンドルの最大の特徴は、時間と共に変化する灯り方にあります。芯の部分は、パラフィンワックスと添加物の配合を何度も試行錯誤し、安全かつ美しく灯り終えるよう調整。火を灯すと、天然顔料で彩られた蝋が上から下へと流れ、涙のような儚さを醸し出します。その後炎は中央から広がり、やがて外側の蝋も溶けていきます。中盤になると、色づい
た外側が欠片のように残り、残骸さえ美しいのです。最後、燃え尽きてから燭台や受け皿に残る蝋も芸術作品のよう。時間と共に変化し続けるので「この先、どんなふうに燃えるのだろう」と、見ているだけでわくわくします。
■商品詳細
時間の経過と共に変化を楽しめる、ペンシルキャンドルをお届けします。3色の中からお好みの色をお選びください。
・アカネ
赤とピンクの中間色。溶けた蝋は薄いピンクとなり、その柔らかな色味にほっとします。
・エンジュ
しっかりとした濃いめの黄色。北海道のエンジュの花のつぼみから採取したもの。
・インドアイ
インド産の藍の葉を発酵させて生み出された色。溶けると優しい藍色となり、癒やされます。
■作り手 nup（長沼町）
イベント出店を重ねるうちに、自身の店を持ちたいと思うようになった東辻さん。2025年夏、町内のレストラン・クレスの敷地内の小屋を借りて、店を出すことが決まりました。仲介してくれたのは、クレス内でTomteという店を営むオーナー。「地域に根差し、長沼に拠点のある人に借りてほしい」という思いがあり、町内で物件を探していた東辻さんの希望と合致したのです。作品の販売けでなく、長沼産の花などを使ったワークショップも開催予定です。「長沼は広過ぎず、狭過ぎず、人との距離感もちょうど良い」と話す東辻さん。花とキャンドルという互いを引き立て合う素材を扱いながら、今後も新たな出会いが生まれていきそうです。
東辻さんの話を聞いていると「置かれた場所で咲きなさい」という言葉が浮かびました。長沼の大地に根を下ろし、地域の人々との縁をつなぎながら、キャンドルと花を通じていきいきと過ごす東辻さん。次なる挑戦の蕾が、膨らみ始めていました。
■お手入れについて
・ガラスや金属製など耐熱性のある受け皿にキャンドルを置いて使用してください。
・溶けた蝋があふれないよう、少し大きめの受け皿を用意してください。
・芯を5�个曚匹縫�ットしてまっすぐ立てて火を点けます。芯を適正な長さに保つことで、きれいな灯りになります。
・火が小さい場合は、一度火を消して溶けて溜まった蝋をティッシュペーパーなどに捨ててください。
・火が大き過ぎる場合は、一旦ピンセットなどで火を消してください。黒くなった芯の先端をカットして、
再び点灯してください。
・1回に灯す時間は、30分から1時間程度がおすすめです。燃焼時間は約10時間。
■商品詳細
商品サイズ：高さ約13.5×直径4cm
※1本ずつ専用の箱に入れてお届けします。
■宅急便60サイズ発送（常温）
2点まで同一の送料でお届けします。
■お届けまでの時間目安
ご入金確認後約7日で発送予定。
■熨斗
対応不可
