■芽室の新顔作物「メムロピーナッツ」
(文・仰木晴香/スロウ82号掲載/とっておきのレシピ、教えてください)
北海道では節分の豆まきに使われることで馴染みの深い落花生。生産地としては千葉県が有名ですが、北海道にも、その栽培に挑戦する若手農家たちがいます。その名も「メムロピーナッツ」。「新たな落花生の産地へ」を合言葉に、芽室町の新顔作物として栽培してきました。
落花生栽培で大きな課題 となったのが、収穫後の乾燥。気温が低い芽室では乾くのに時間がかかり、せっかく収穫した落花生全てに黒カビが生えてしまったことも。元々使っていたじゃがいもや玉ねぎを乾燥させる機械を活用し、きれいに乾燥させています。
芽室町での落花生の栽培が始まったの は2009年のこと。「 J A めむろの青年部の年間活動テーマが『新規作物への挑戦』になったことがきっかけです」と教えてくれたのは、代表の藤井信二さん。その背景には、ビートの苗を育てるためのビニールハウスを夏も活用することに加え、特色ある農作物を生み出すことにより、地域の農業を更に発展させようという狙いもありました。
最初に取り組んだのは、生姜と蒟蒻芋、そして落花生の3種類。その中で選ばれのが落花生だったのです。「毎年秋に行うJAのイベントで茹で落花生を出したところ、『すごくおいしい!』と話題になって」。加工の手間をかけずに、シンプルにおいしさを届けられる落花生。イベントで多くの人に味わってもらうことを励みに、毎年栽培を続けてきました。
ところが2016年、活動が成熟してきたことで、青年部としての取り組みには一度区切りをつけることに。そんな中で「続けたい」と声を上げたのが、2014年から青年部に加入した藤井さんでした。「より良い栽培方法を探したり、来年はもっとこうしようって盛り上がったり。青年部のみんなで話し合いながら一緒に取り組むのがすごく楽しかったんです」。藤井さんは農家の5代目。実家で栽培されていた作物はすでに安定した栽培方法が確立されていました。しかし落花生に関しては、北海道での栽培事例も少なく、自分たちでより良い方法を見つけていくしかありません。そんな試行錯誤や仲間とのコミュニケーションに、藤井さんは農業の面白さを感じていたのです。藤井さんは声掛けに応じて集まった3人のメンバーと共にメムロピーナッツを立ち上げ、活動を続けることになりました。
■「がむしゃら」な活動を続けて広がってきた輪
組織での活動から個人での栽培へと変化したことで生まれた新たな課題が、販売先探しです。大規模に生産し、農協に出荷するというのが、芽室の農業の一般的な流れ。一方で生産量の少なかった落花生は取り扱いが難しく、自分たちで売り先を見つける必要がありました。「青年部で栽培していたときは『1年の成果を発表する』ことがゴールだったんですが、今度は自分たちで販売しなくちゃいけない。とにかくがむしゃらに売り先を探しました」。居酒屋への飛び込み営業や、SNSでの情報発信、商談会への参加。忙しい農作業の合間を縫って地道な広報活動を続けました。
軌道に乗り始めたのは3年目の頃。「飲食店やスーパーで見て問い合わせをもらったり、興味のある人とつないでもらえる機会が増えてきました。紹介の紹介で、活動の輪も広がっていったんです」。藤井さんたちの落花生栽培にかける熱量は周囲の人々を動かし、さまざまなコラボレーションが実現しました。シェイクやソフトクリームといった企業とのコラボメニュー、ドレッシングなどの商品開発、地元飲食店でのメムピーフェア、そして芽室落花生祭りの開催…。栽培に留まらず、販売やPRにも力を入れてきた努力が実を結び、「メムロピーナッツ」の名前は徐々に広がりを見せています。それに伴って栽培規模も拡大し、現在では栽培農家は12軒、生産量は栽培を始めた当初の15倍にまで増加。2023年には遂にJAめむろで生産組合が立ち上がり、農協と連携した販売が できるように。芽室町の重要な農作物の一つとして認められるようになりました。
メムロピーナッツが目指すのは、芽室を新たな落花生の産地にすること。「最初の頃から掲げている目標なんです。自分たちの取り組みを広げたいのはもちろんですが、千葉県の農家さんが、農家の高齢化が進んで生産量が減少している中で、『北海道の若い君たちが頑張ってくれよ!』って応援してくれたんです。それになんとか応えたいと思っています」。
■多くの人と協力するからこそ活動を続けていける
幅広い活動の中で藤井さんが実感しているのは、誰かと協力することによって生まれる可能性の大きさ。「農家ってなんでも自分でやるというイメージがあったんですが、落花生の栽培を始めてから、1人でできることは限られていると思うようになりました。営業に事務作業にと業務が増えて、それを全部自分でやっていたら本業である農家の仕事がおろそかになってしまう。農業にしっかりと集中できる今の形ができているのは、いろいろな人の協力があってこそなんです」。
写真上/2022年に始まったイベント「芽室落花生祭り」。落花生畑をで収穫体験や落花生を使った料理を楽しめる、メムロピーナッツをとことん味わうイベントです。
多くの人々を巻き込みながら成長を続けるメムロピーナッツですが「産地としてはまだまだ道半ばです」と藤井さん。今後も新たな加工品の開発に力を入れていきたいと展望を語ってくれました。メムロピーナッツのこれからを、応援し続けたいと思います。
■セット内容紹介
・ピーナッツバター:ピーナッツの甘みとコクを凝縮した、こっくりとした味わいのピーナッツバター。柔らかなペースト状で、料理やお菓子にも使いやすいのがポイント。
・ピーナッツバター 深煎り:プレーンよりも深いコクと濃い甘みで、チョコレートに似た味わい。そのままパンに塗って食べるのがおすすめです。
・ローストピーナッツ:地温の低さを補うため、ビニールマルチとパオパオ(農業用不織布)で二重に保温。これにより、大粒の立派な落花生に。より長い時間をかけて土の中で育つことで、甘みが増した落花生。そのままはもちろん、砕いてサラダやお菓子のトッピングにも。
砂糖を加えずに仕上げるピーナッツバターは、落花生のコクとまったりした甘さを活かした濃厚な味わい。ペースト状で扱いやすく、ソースや料理の隠し味にも活用できます。
■作り手 メムロピーナッツ(芽室町)
現在、メムロピーナッツの生産農家は12軒。地域の若手農家が中心です。
■商品詳細
・ローストピーナッツ
賞味期限: 製造より6ヵ月
原材料:落花生
・ピーナッツバター/ピーナッツバター 深煎り
賞味期限: 製造より6ヵ月
内容量:80g
原材料:落花生
■宅急便60サイズ発送(常温)
3セットまで同一の送料でお届けします。
■お届けまでの時間目安
ご入金確認後7営業日で発送予定。
■熨斗
対応不可