■いつもの食卓、晩酌にも。気軽に楽しむシャルキュトリー
(文・猿渡亜美/スロウ82号掲載)
「シャルキュトリー」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。ハム、ベーコン、ソーセージ…。「肉」と「火を入れる」というフランス語が語源で、食肉加工業全般のことを指します。北海道内でソーセージやハムを作る工房は多いものの、パテ、テリーヌ、リエットなど幅広く肉加工品を手掛ける店だけがシャルキュトリーと呼ばれているようです。最近は道内でも個人によるシャルキュトリーが増え、気になる情報をあちらこちらで耳にするようになりました。その一つ、2018年からニセコ町でシャルキュトリーを営む、赤石泰洋さんを訪ねてみました。
赤石さんはニセコの自宅の横にある厨房と、自宅の裏の熟成庫を行き来しながら商品を作っています。厨房と熟成庫はどちらもコンテナサイズで、基本的には一人で作業します。規模が小さく、ここから30種以上の商品が生み出されているとは驚くほど。「たまに『本当に一人でやっているんですか?』と聞かれますね」と笑う赤石さん。6年前にシャルキュトリーを始めてから、軌道に乗るまでの話をしてくれました。
札幌市内のホテルでシェフとして働いていた頃、ニセコにオープンする紅茶専門店ルピシアから声がかかり転職。野菜や肉を使った総菜、加工品の製造に加えマネジメントも担い、忙しい日々を送っていました。そんなある日、赤石さんは体調を崩してしまいます。「自分にしかできない、と思い込んでいたのですが、私が休んでも仕事は滞りなく回った。それなら自分にしかできないことをやってみたいと思いました」。趣味でハムやソーセージを作っていたこともあり、肉の加工での独立を目指すことに。
まずは道外の食肉学校に通って製造の資格を取得した後、自宅近くに厨房や熟成庫を作り、設備を整えました。要となるシャルキュトリーのレシピはほとんど独学。というのも、シャルキュトリーといっても作り方はさまざまで、正解はありません。赤石さんは書籍を頼りにして知識や技術を身につけました。ルピシア時代の経験や、趣味で10年にわたって追求してきたことも後押し。正解のない世界ですから、基礎を固めた後は、自身の知識と哲学が重要になるのです。
■地域性を大切に。赤石さんのこだわりと哲学
ヨーロッパのシャルキュトリーでは使う素材の地域性が大切にされます。赤石さんも素材へのこだわりが強く、肉はベーコンを除き、すべて北海道産を使用。豚肉は真狩村のゴールドポーク、江別産の黒豚、恵庭ゼストファームの赤毛豚エニワロッソの3種類を使い分けています。中でもゴールドポークは肉質が良く、バランスが良い四元豚(4種の豚を掛け合わせて作られた高品質な豚)です。生産者の金丸ファームから直接仕入れ、新冠町の屠畜場に依頼して、あえて皮つきのまま納品してもらっています。「皮つきだと、きれいに熟成できるんです。しっかりと甘い熟成の香りがします」。そんなゴールドポークから作る生ハムは開業当時からの看板商品。毎年、秋から冬にかけて1年分の生ハムを仕込みます。塩漬けに3〜4週間、その後の熟成は冷房や暖房を使わず、自然の状態のまま庫内で寝かせます。熟成や乾燥のやり方は、毎年少しずつ変えているそう。12〜18ヵ月にわたり寝かせた後、出荷します。
定番商品のレバーペーストには鶏レバーをチョイス。脂肪の多い、白っぽいレバーを使っており、まろやかで食べやすい仕上がりです。リエットにも豚肉ではなく鶏肉を採用。それは赤石さんが「豚肉のリエットがちょっと重たくて…」という理由から。鶏肉を白ワインで煮込み、融点の低い鴨の脂をつなぎに。口の中ですっと溶けていく爽やかな一品です。また、エゾシカのパテには3割ほど豚肉を混ぜています。シカは赤身肉なのでデリケート。匂いや食感の兼ね合いを考えて、豚肉でバランスを調えています。
シャルキュトリーアカイシの商品を店頭で購入できるのは北海道内のみ。「『(販路を)広げないのですか?』とよく聞かれますね。僕のキャパシティもそうですが、シャルキュトリーはヨーロッパなら、パンやワイン、チーズと同様に各地にあるもの。作られたその土地で味わってほしいんです」。北海道にはチーズ工房やワイナリーが多く、最近ではハード系のパンをメインとするパン屋も増えてきました。そう考えると、シャルキュトリーの数が少ないのは不思議なほど。シャルキュトリーは今後もっと盛り上がってくるかもしれません。
赤石さんが目指すのは、家庭で気軽に楽しめるシャルキュトリー。「どれか一品でも選んでもらい、それがいつもの食卓や晩酌を彩る存在になると良いですね。気に入ってリピートしてくれたら、もっとうれしいです」。赤石さんの思いや哲学が詰まったシャルキュトリー。今回は試しやすい6種類をお届けします。
■商品紹介
生ハムからパテ、リエットまで。ワインによく合うラインアップです。初めての方にまず味わってほしい、おすすめの6種類をセットにしました。
・北海合鴨の生ハム
赤石さんが滝川市の北海合鴨に惚れ込んで製品化。2週間の熟成でうま味がギュッと凝縮します。
・長期熟成の生ハム
北海道産豚肉を皮つきのまま12ヵ月にわたって熟成。サシの入り具合、脂の甘みと塩加減が絶妙です。
・蝦夷鹿のパテ
鹿肉:豚肉の7:3の割合で作るパテ。ほど良く鹿肉の風味、味わいが感じられます。
・砂肝コンフィ
92℃の低温で4時間かけて焼き上げ、グレープシードオイルでじっくりと煮込んでいます。ワインやビールのお供に。
・鶏白レバーペースト
脂肪の多い白レバーを使用。クセが少なく、レバーのクセは控えめです。ハード系のパン、赤ワインがぴったり。
・鶏肉のリエット
鶏肉によって軽やかな仕上がりに。合鴨の脂でつなぎ、香りも良いです。パンやクラッカーと合わせて。
■作り手 Charcuterie AKAISHI(ニセコ町)
浜中町出身の赤石泰洋さん。2014年からニセコ町で暮らし、2018年に独立。ニセコは雪こそ多いものの、湿度は低く、シャルキュトリーに向いているのだとか。経理などを手伝う妻と、2人の娘がいます。
■商品詳細
・北海合鴨の生ハム
原材料:豚肉(北海道産)、食塩、てんさい糖/酸化防止剤(V.C)、発色剤(亜硝酸Na) 内容量:35g
・長期熟成の生ハム
原材料:豚肉(北海道産)、食塩、てんさい糖、/酸化防止剤(V.C)、発色剤(亜硝酸Na)内容量:50g
・蝦夷鹿のパテ
原材料:鹿肉(北海道産)、豚肉、合鴨レバー、鶏レバー、ベーコン、卵、牛乳、バゲット、玉葱、クリーム、食塩、洋酒、香辛料、ゼラチン、トレハロース、にんにく(一部に小麦・卵・乳成分を含む)/酸化防止剤(V.C)、発色剤(亜硝酸Na)内容量:100g
・砂肝コンフィ
原材料:鶏砂肝(北海道産)、グレープシードオイル、食塩、にんにく、トレハロース/酸化防止剤(V.C)、発色剤(亜硝酸Na)内容量:120g
・鶏白レバーペースト
原材料:鶏レバー(北海道産)、豚脂、クリーム、卵、食塩、洋酒、鴨脂、香辛料、トレハロース/酸化防止剤(V.C)、発色剤(亜硝酸Na)内容量:80g
・鶏肉のリエット
原材料:鶏肉(北海道産)、鴨脂、玉葱、ワイン、榎茸、食塩、香辛料、にんにく/酸化防止剤(V.C)内容量:90g
賞味期限:加工日より冷蔵で25日
■宅急便60サイズ発送(冷蔵)
1セットまで同一の送料でお届けします。
■お届けまでの時間目安
ご注文より7営業日で発送
■熨斗
対応不可