赤色の胴体に、細長い腕。たくさんの吸盤。宇宙人のような奇抜な見た目なのに、食べるとむっちりとした身や吸盤の食感がたまらなく癖になるタコ。北海道の海港では数種類のタコが水揚げされています。
根室市の南西に位置する落石漁港も、タコが水揚げされる港のひとつ。ここでタコをメインに使った加工品を手作りするのは、海鮮工房霧娘の皆さんです。
写真上/漁港に停泊していたタコ漁の漁船。落石では、籠の中にエサを入れて獲る「タコかご漁業」と、針を仕掛けた縄を海底に張り、移動するタコを引っ掛ける「空釣り縄漁業」の2つが行われています。
2007年に漁師の妻6人で結成された霧娘。春夏秋冬、イカや昆布、ホッケやカニなどさまざまな海の幸が獲れる落石ですが、その中でもタコは漁期が8月〜4月と長く、携わる漁師の数が多い海産物。霧娘のメンバーも全員がタコ漁に関わっていたことから、「落石のタコ」に対する並々ならぬ思いを抱いていたのだと言います。「結成当時は、今よりタコがたくさん獲れて、海外からの輸入もあったもんだから、なかなか落石のタコの価値が上がらなくてね」。そう教えてくれたのは、代表の小谷鈴子さん。加工することで付加価値を少しでも付けられたらというのが、霧娘の始まりでした。以後約15年に渡り、加工品の製造からイベント出店、弁当販売など、落石の海の幸を広く知ってもらうため、家業である漁業の作業の合間を縫いながら活動を続けてきました。
タコと言えば、歯ごたえのあるイメージですが、霧娘のタコの加工品は軟らかく、食べやすいのが特徴。初めて口にした時から気になっていたその理由を尋ねると、「何でだろうねえ」と、のんびりとした答。「新鮮なうちに内蔵を取って、冷凍してしまうからかな」。加工場から漁港までの距離は、わずか200メートルほど。港に水揚げされたタコを仕入れてすぐ、まだ動いているうちに下処理をできてしまうのが、軟らかさの秘訣なのかもしれません。
特に食感にこだわったというのが、「たこザンギ」。サクッと香ばしい衣と、むっちりとしたタコの身。試作を重ねた結果、味付け後に冷凍し、衣をつけて短時間で揚げることで対称的な2つの食感を生み出すことができました。
漁師一家を支えるお母さんとしての一面も持つメンバー。「身体に良いものを食べてほしい」との思いから、素材選びにも力を入れています。中でも「たこのやわらか煮」、「たこ飯の素」は化学調味料を使わずに商品化を実現。「安心・安全がモットー」の霧娘自慢の一品となりました。
15年の節目を迎えて。今後の目標は、できる限りタコの商品を生み出していくこと。「やっぱり、タコにこだわっているんですよね」と小谷さん。ほかのメンバーも頷きます。1年のほとんどをタコ漁が占め、それゆえに向き合う時間も長いのでしょう。自然相手の漁業は思い通りにいかないことがほとんど。その苦労を自身が漁業者として身をもって感じているからこそ、「落石のタコを知ってもらいたい」という思いに熱が入ります。
自分で料理するには少しハードルを感じるタコですが、今回お届けするのは、少し手を加えるだけで出来たてのおいしさを味わえるたこ料理の素2品と、ご飯のお供や酒のつまみにピッタリなおかず2品の文字どおり「タコづくし」セットです。この通信販売の機会を通して、落石で水揚げされるたこ、ひいては落石の海の幸について少しでも知ってもらえたなら。浜のお母さんたちにとって、それほどうれしいことはないでしょう。
・たこ飯の素:研いだ米に具材を混ぜて、後は炊飯器におまかせ。炊き上がりの香りがたまりません。
・たこやわらか煮:やさしい味の沁み込んだ軟らかくおおぶりの身。本誌編集部スタッフを唸らせた一品です。
・たこキムチ:落石産昆布を食感のアクセントに加えました。食べ始めたら止まりません。
・たこざんぎ:冷凍のまま、1分半〜2分揚げるだけ。揚げたてはもちろん、冷めてもおいしいのがうれしいところ。