■網走の優秀な素材と、ものづくりの力を掛け合わせて。
(取材・文/山口翠 スロウ73号掲載)

写真上/社屋の前に広がるオホーツク海。牛渡水産は網走近郊の海域で獲れる魚介類のみを使用しています。
網走漁港のすぐ近く、オホーツク海を目の前に望む牛渡水産。代表の牛渡貴士さんは、アイデアと行動力、そしてエネルギーに満ち満ちた、水産加工会社の若き3代目です。7年前に網走にUターンし代表に就いてからというもの、新しい商品を次々と世に出してきました。
それらに共通しているのは、ほかでは見たことのない、一風変わった商品だということ。毛ガニを丸ごと一匹剥いて球体にした「ケダマ」や、炙ったカニの殻を日本酒にどっぷり漬けた「から酒」など。どれもが一度目にしたら忘れられないような、インパクトのある水産加工品なのです。
前職では家の設計の仕事に携わり、水産業界にはまったく縁も知識もなかったという牛渡さん。逆にまっさらな視点から水産業界を見ることができたのでしょう。次第に市場の商品を差別化する要素の少なさを感じるようになっていきました。「当時はカニという商材に対して、丸ごと1匹か脚の2パターンしか売り方がなかったんです。謳い文句も、大きさや産地、ボリュームに関してのみ。ありきたりで、何だかつまらないなと思って」。ケダマやから酒が生まれたのは、水産業界のそんな側面にものづくりの要素で、てこ入れをしていきたいと思ったから。「丸ごと一匹剝かれたカニを食べたい人はきっといるはず」とケダマの商品開発を始めたり、から酒を完成さるために、「カニの殻の研究に3年半費やした」と話します。こうして、持ち前の発想の豊かさと新しい物を0から作り上げる実行力で、新商品を生み出してきたのでした。

写真上/写真中央がカニのお腹部分を指す「ふんどし」。カニのおいしい部位として一般的に知られているのは脚ですが、お腹や肩の部分も「おいしんですよ」とのこと。
「かにハラミ」も、牛渡さんのものづくりのセンスや行動力によって生まれた商品。使うのは、カニのお腹で「ふんどし」と呼ばれる部分です。実はこのふんどし、海産物の味を知り尽くした漁師さんが一番最初に食べ始める場所と言われるほど、弾力があって、味も濃く、非常においしいとされる部位。ところが、市場では安価で出回ることが多く、場合によっては捨てられてしまうこともあるのだそう。「カニ自体の価値は高いのに、どうしてこの部位は手に取ってもらえないのだろう」。その理由を知るため、牛渡さんはリュックサックにいっぱいのふんどしを詰めて、東京行きの飛行機に飛び乗ります。向かったのは、大勢の人が行き交う渋谷や日本橋の駅前。「これって何かわかりますか? 」。道行く人にふんどしの試食を配っては、見た目、ネーミング、味を聞いて回り、その結果わかったのは、「口にさえしてもらえれば、勝ち」だということ。自身の足で集めた生の声を参考に、より親しみやすく、手に取りたくなるものをと改良を重ね、「かにハラミ」を完成させたのでした。

写真上/カニが水揚げされるのは、1週間に一度。それも、競りの直前までカニが入ってくるのかわからないのだそう。そのため、水産業者にとってカニは非常に価値が高く、牛渡さん曰く「その日の競りの雰囲気、盛り上がり方がホタテのそれとは全く違う」と言います。
網走でしか獲れない「イバラガニ」という品種をメインで使っている点にも、牛渡さんの狙いがあります。聞けば、かにが水揚げされるのは1週間に1度ほど。それに加えてイバラガニを獲れる漁船は、国内で網走にある一隻のみ。これは「希少」と銘打っても良いはずです。とはいえ、全国的に見たらまだまだ知られていない品種であることも事実。イバラガニ自体の存在や味の良さ、そして漁場としての網走の名を広く伝えるため、これからもイバラガニを看板にした新しい商品を生み出していくつもりなのだと教えてくれました。
「楽しいですよ、ものづくりは」。でも、やりたいことがたくさんあって、時間がないんです、と困ったように笑う牛渡さん。そんな中で、一番やりたいこととして教えてくれたのは、捨てられてしまう部位の商品化です。価値はあるはずなのに、どうしてか見向きもされない部位や魚介類の数々。「水産現場で現状を見ていると、魚たちに申し訳なく感じるんです。命をいただくのだから少しでも捨てられるところをなくしたい。商品化を進めて、その部分に価値をつけられたら」。価値の見出されてこなかったふんどしを使って「かにハラミ」を生み出したように、自身の持つものづくりの力や行動力と網走の豊かな海産資源を掛け合わせて、新たな価値を生み出していきたいというのが、牛渡さんの願いであり、目標です。
■商品紹介
名前の由来は、焼き肉の人気部位「ハラミ」から。カニ1匹から数10gしかとれない「ふんどし」をたっぷりと瓶に詰め込んだ贅沢なひと品です。牛渡さんが味付けを100パターン以上試してたどり着いたという3種類の味付けで、お召し上がりください。
・プレーン
まずは「ふんどし」の味をそのまま味わうため、シンプルに甘塩で。一口食べれば、浜の香りが口いっぱいに広がります。
・山わさび和え
小清水町産の山わさびを使用。ツーンとし過ぎず、マイルドな辛みがアクセントに加わります。温かいご飯のお供にももちろん合います。
・外子和え
産卵期にカニのお腹につく「外子」。プチプチとした歯応えと「ふんどし」のプリッとした食感の2つの感覚が楽しめます。意外にも相性抜群なのが驚きです。
■作り手 牛渡貴士さん(網走市)
有限会社牛渡水産の3代目。「水仕事は手が痒くなるからあまりやりたくなかったんです」と話します。高校から網走を出たきりになっていたものの、実家から「家業を畳もうかと思っている」と連絡を受け、すぐにUターンを決意。代表就任後は新商品を開発するほか、市内に居酒屋をオープンさせたりと精力的に活動を広げています。
■商品詳細
賞味期限:製造日より冷凍で90日
※解凍後は早めにお召し上がりください
内容量:各100g
原材料:
・かにハラミ【プレーン】/いばらがに、本たらばがに、食塩、蟹エキス、香料
・かにハラミ【山わさび和え】/いばらがに、本たらばがに、山わさび、食塩、蟹エキス、香料
・かにハラミ【外子和え】/いばらがに、本たらばがに、いばらがに外子、食塩、蟹エキス、香料
セット内容:かにハラミ【プレーン】、かにハラミ【山わさび和え】、かにハラミ【外子和え】×各1
■宅急便60サイズ発送(冷凍)
■お届けまでの時間目安
ご入金確認後6営業日以内に発送予定。
■熨斗
対応可
対応可能な熨斗は以下の通りです。ご希望の方は備考欄に記入してください。
・祝いのし紅白蝶結び
・祝いのし10本紅白結びきり
・祝いのし5本紅白結びきり
・仏のし黒白結びきり
・仏のし黄白結びきり