■無添加・放牧豚ソーセージを追って
(取材・文/萬年とみ子 スロウ69号掲載)
オホーツク興部町で、放牧酪農を営むノースプレインファーム。有機認証の草地、放牧主体の育て方。どこまでも健康で安心な育てられ方をしている牛からの生乳を原料につくられている、チーズやヨーグルトなどの乳製品。「安心で、かつ自然らしくあること」を大切にした経営姿勢、安心感を伴う味や風味は、すでに多くの人に支持されているところです。
興部に広がるノースプレインファームの牧場。腰折れ屋根の牛舎をはじめ、点在している建物群に混じって、訪れる人を最初に迎えてくれるのがミルクホールの建物です。中に足を踏み入れると、まずは焼き菓子や乳製品などの自社製品、加工品が目に入ってきます。奥には北海道各地の珍しいワインなども並び、たとえチーズ好きならずとも、吟味、探索したくなる魅力的な買い物スポットとなっています。
写真上/ミルクホールの中はレストランにもなっていて、寛ぎながら食事を楽しめる場所に。
このミルクホールで購入し、一度口にして以来、いつも頭から離れなくなってしまった商品が、今回、スロウで紹介できることになった「北海道放牧豚ソーセージ」。牛肉ではなく豚肉を原料としたソーセージが並ぶ冷凍ケースを見て、「どうして?」と不思議に感じたのは数年前のこと。以来、機会があるたび、ソーセージについての質問を投げかけているうちに、「ノースプレインファームさんらしい商品だなァ」と思うようになっていたのです。
ノースプレインファームが自社独自に肉の加工品作りを始めたのは、想像以上に早く、平成4年からのことだそうです。当時はまだ牛肉加工に関する情報が少なく、まずは豚肉で試作品作りを始めたことが、現在のソーセージの原型となりました。添加物を使わずに作った試作のソーセージがとてもおいしかったことから、商品化につながっていきます。当初、原料の豚肉は一般的な仕入れルートから仕入れていましたが、無添加による製品作りにこだわりながら開発を進めたことで、満足できる味と風味、弾力感のあるソーセージが開発されたようです。
酪農経営において、雄牛をどう扱うかは大きな課題のひとつなのでしょう。ノースプレインファームとしての結論は、採算面から考えて、「肉牛の飼育と加工」は断念するというものでした。そのタイミングで、ソーセージの加工を自社で継続するのを停止し、製造委託先を探すことにしたのだそうです。
■製造を外部に委託することで、品質がさらに向上した理由
「ソーセージを自社で作っていたとき、乳製品同様、食品添加物を使わずにおいしいものを作ろうと、さまざまな工夫をしながら製品化していました」とは、副社長の吉田年成さん。牛乳に含まれるタンパク質、カゼインの力で肉を結着させる製法を開発。保存料や着色料も使わず、香辛料などを工夫することで完成させていたソーセージは味も風味も良く、当時すでに、多くのファンの心をつかんでいたようです。
現在、製造を委託しているのは、ファーマーズファクトリーという肉の加工等を専門とする食品会社です。自社製造していたときのレシピを踏襲してもらいながら、さらに原材料、製造工程などの点で、製品の質は数段高まり、今も昔からのファンの心と舌を満足させています「自社製造時代よりも品質が良くなっています」とは、吉田さん。
ファーマーズファクトリーがソーセージの原料としているのは、「放牧豚」。全頭買い取りの委託飼育をお願いしている先が厚真町にある「希望農場」です。
9月上旬、豚の放牧地を案内してもらえることになりました。案内してくれたのはファーマーズファクトリーの上村紘功(ひろのり)さん。未だ、あの大地震時の災害の爪痕が色濃く残る厚真ですが、広がる田んぼの稲は黄金色に染まり始めていて、豊作の気配と復興の兆しを重ね合わせ、少し安堵の気持ちを抱きながら厚真郊外へと車を走らせました。放牧豚を育てている「希望農場」の敷地付近にも、色づき始めた田んぼが広がり、ジリジリと肌を焼くような秋の太陽が稲穂の色をさらに鮮やかに輝かせていました。
豚舎などが建ち並ぶその先、なだらかな起伏を持つ山あいに放牧地は広がっていました。広さはおよそ5ヘクタール。元は草が生えていたという斜面(イノシシ科の豚が放牧地の土を掘り返してしまうため、草が生えていない)、大きなドームが3つ並ぶ前には平地が広がり、恐らく400頭はくだらない豚が思い思いに歩き回ったり、寝転んだりしています。山の頂上に向かって、早足で果敢に登っていく豚。鼻先で器用に穴を掘り進めていく豚。どれも個性的で愛らしい動き、仕草は、ジッと見ていて飽きることがありません。
■高品質の肉を育む放牧、水と餌、快適な住環境を提供してくれるバイオベッド
大きなドームの中にはそれぞれ、水場、餌場、寝床が用意され、放牧されている豚は好きなときに外を歩き回り、お腹がすけばドームに戻ってきて餌を食べ、疲れれば横になって休む。見るからに、ストレスフリーの状態で飼育されています。
ストレスが少ないから病気にかかりにくく、抗生物質などの世話になる必要もない。限りなく安心な肉質が蓄えられていく理由がたやすく理解できる放牧豚の飼育風景でした。
餌として与えられているのは、コーンや大豆など、非遺伝子組み換え穀物原料の配合飼料。飲み水は井戸水。寝床として採用されているのは、おがくず利用のバイオベッド(醗酵床)。悪臭や雑菌の繁殖を抑えてくれることから、豚の居住環境を清潔で快適に保ってくれる働きがあるそうです。冬の間も放牧は継続されますから、ポカポカと暖かいバイオベッドによって、豚たちは冬場の寒さからも守られることになります。希望農場を訪れることで手にできた安心感のようなものを、あの伸びやかな放牧風景と共に、これから先も決して忘れることはないでしょう。ストレスに弱いとされる豚ですから、この快適な環境が良い肉質を育んでくれるのだと、心から納得できたように思います。
■元々肉が持ち合わせている成分を活かし、添加物フリーに。
希望農場の放牧豚は車で20分ほどのところにある施設で屠畜され、枝肉となってファーマーズファクトリーの工場まで温度管理された自社トラックで運ばれます。この鮮度の高さこそ、おいしくて安心なソーセージ作りに欠かせません。
屠畜された豚は、速やかに工場で解体されていきます。骨から外された肉は脂身だけ別にされ、赤身肉をミンチにし、そこにうま味成分のひとつとして欠かせない脂身を適量戻し、水、香辛料と一緒にチョッピング、さらにミンチに。「赤身部分に含まれているミオグロビンには肉同士を結着させる働きがある」ため、この成分を活かすことで、「結着剤を加えないでソーセージを作れる」と、ファーマーズファクトリー商品開発室室長、小川勉さんが教えてくれました。赤身部分のミオグロビンの結着力が働いてくれるのは、屠畜後肉原料が新鮮な状態の時のみ。そのためにも、豚の放牧地と屠畜場、加工工場の距離、そして配送方法などが問われることになるのです。
想像するだけで慌ただしく、文字通り時間との闘いが毎日繰り返されている加工工場。チョッピングから腸詰め作業の現場を見学させていただけたことで、臨場感と共に、多くのことが理解できたように思います。
腸詰め作業を終えると、スモーク&蒸気による加熱の工程へ。人間の背丈を遙かに超えた高さの「スモークハウス」が2基。中には腸詰めされたばかりのソーセージが下げられていて、桜チップでの燻煙がスタートしていました。この工程を経て、ノースプレインファームの4種類のソーセージは作られています。
写真上/ファーマーズファクトリーの工場内見学時に。左からノースプレインファームの吉田さん、ファーマーズファクトリーの小川さんと上村さん。
「農家さんと一緒に、素材を活かして作る」のが、創業時からのファーマーズファクトリーの会社としての姿勢。「放牧という自然に近い環境で育てているため、多くのことで気が休まりませんが、愛情を持って育てています」(希望農場、清野光弘社長)。アニマルウェルフェアの精神を思わせる希望農場での放牧豚の育て方。そんな放牧豚の高い肉質をそのまま活かし、おいしさを最大限に引き出しながらソーセージとして加工しているファーマーズファクトリー。
ノースプレインファームのあのミルクホールで見つけたソーセージに詰まっていた奥行きのあるストーリー。添加物などの「嫌なにおい」のしない、肉のうま味そのままの味わいが楽しめるソーセージ。桜チップによる独特の良い香り、噛みしめたときの心地良い弾力感。自社ミルクの乳タンパク効果によるマイルド感。それらのおいしさがどこからきているのか。それらの理由を突き止められたことに、満足しています。
■セット内容紹介
放牧豚、低温殺菌牛乳で練り上げたポークウィンナー。亜硝酸塩、リン酸塩、化学調味料などは一切不使用。肉本来のうま味が詰まった安心で自然なおいしさです。4種類のソーセージをセットにしました。
・北海道放牧豚ソーセージホワイト
スモークをかけていないホワイトタイプ。あっさりしているので、多くの料理と好相性。
・北海道放牧豚ソーセージガーリック
粗挽きタイプにスパイシーなガーリックをプラス。
・北海道放牧豚ソーセージあらびき
粗挽きにし、ジューシーな仕上がりに。
・北海道放牧豚ソーセージプレーン
きめの細かい挽き方をしたスタンダードなタイプ。
写真上/調理例。ソーセージで作るジャーマンポテト。
写真上/調理例。牛乳スープに加えて手軽に。
■作り手 ノースプレインファーム(興部町)
ノースプレインファームがあるのは、オホーツク海に面した町、興部町。有機JAS認証を受けた草地の草を食べ、放牧地でのびのび育った牛の生乳を原料に、牛乳やチーズなどの加工品を作っています。
■商品詳細
賞味期限: 製造日より冷凍で365日
原材料:
・北海道放牧豚ソーセージホワイト/豚肉(北海道産)、豚脂肪(北海道産)、有機牛乳、食塩、砂糖、香辛料
・北海道放牧豚ソーセージガーリック/豚肉(北海道産)、豚脂肪(北海道産)、有機牛乳、食塩、砂糖、おろしにんにく、香辛料
・北海道放牧豚ソーセージあらびき/豚肉(北海道産)、豚脂肪(北海道産)、有機牛乳、食塩、砂糖、香辛料
・北海道放牧豚ソーセージプレーン/豚肉(北海道産)、豚脂肪(北海道産)、有機牛乳、食塩、砂糖、香辛料
セット内容(内容量):プレーン、あらびき、ガーリック、ホワイト(各100g)×各2
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ご入金確認後7営業日で発送予定。
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